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2020/12/25 16:52

大分県別府市のセレクトショップ『SELECT BEPPU』です。

今回は別府に工房を構え、土鈴人形などの郷土玩具を作る『豊泉堂』宮脇さんの工房におじゃましてきました。



宮脇さんは現在販売していないものも含めて今まで50種類以上の人形を作っているそう。

当店でも人気の『福獅子』をはじめ、『だるま鈴』『みくじ鳩』などの大分県ゆかりの郷土玩具を中心に作られています。

また大分市柞原八幡宮の初秋のまつり 浜の市名物の『一文人形』は、大正末期に一度姿を消してしまったものを宮脇さんが再現されていて、地域の伝統文化を後世に伝える貴重な作り手さんでもあります。


(藁に差さっている顔の人形が一文人形。当時の面影を再現した21種類の人形の裏には『いろは』の記号がつけられています。)


棚の上にはずらりと作品たちが並んでいましたが、見慣れたものの中に目を引く形をした人形がありました。


「こちらも豊泉堂さんの作品ですか?」と伺ってみると、過去に国東半島のホテルのお土産品として作った商品なのだそうです。

「1,回作って以来作っていない。よく売れたんだけどね。でも、この商品を作ったことで考え方が広くなったんだよ。それまでは伝統工芸として郷土玩具だけを作っていたけど、お客さんがいいと思うものを作った方がいいんだろうかと思うようになって。転換期になった作品だね。」

 


そんな発想から生まれたのが季節の風物詩を取り入れたデザインの『だるま鈴』です。


(季節にあわせたモチーフが描かれている、毎月の限定色の『だるま鈴』)


4月にはたんぽぽと蝶々、7月には七夕の天の川、10月には三日月とうさぎなどが描かれています。

家内安全や商売繁盛を願う縁起物として親しまれている『だるま鈴』ですが、

日本の伝統文化を今の時代に合った形で伝えていきたいという、宮脇さんの愛情と柔軟なアイデアがつまった商品です。

 

ところで、宮脇さんはもともとは名古屋のご出身。どのような経緯で別府で人形作りをはじめられたのでしょうか?

名古屋の百貨店に勤められていた宮脇さんは、20代の頃に別府に移ってこられました。

当時、お土産品の総合卸しの会社であった豊泉堂がちょうど求人募集をしており、宮脇さんは配達人として働き始めることになったそうです。

手先が器用な宮脇さんは、当時の豊泉堂に土人形を卸していた職人さんから人形作りを教わり、製作するようになりました。

それから豊泉堂の社長であった先代の樋口さんが退職されるタイミングで『豊泉堂』の看板を引き継ぎ、人形作家としてやっていくことに決めたのだそうです。

 

「郷土玩具というのは土偶や埴輪が先祖みたいなものなんだよ。」と語る宮脇さん。

縄文時代には土偶が作られていたので、暮らしの中に「置物」としての人形はすでに存在していましたが、商品として流通したのは江戸時代からなのだそう。

人々が次第に旅行をするようになり、郷土玩具はお土産品や商売人のための縁起物、またご神事に用いる豊年豊作や魔除けの品として派生していったそうです。

今年は感染症の影響で妖怪のアマビエが話題になりましたが、人の健康や幸せを願うところには遠い昔から『縁起物』の存在があったのですね。

 
(成型が終わり窯入れ前のずらりと並んだ人形たち。素朴でやわらかな形が魅力。)


今後は『猫シリーズ』を作ってみたいと考えているそう。猫好きの宮脇さんが歴代飼っていた猫のデザインで作りたいとのことでした。

どんなかわいい作品ができるのか、今からわくわくしてしまいます。

 
(現在作られている『まねき猫』の土鈴人形。手乗りサイズです。)


宮脇さんお一人の手で成型から焼成・絵付けまで人形作りを行っている『豊泉堂』の郷土玩具。

尽きない魅力の一端を垣間見れたような気がします。

 

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SELECT BEPPU

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