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2021/10/12 12:00

大分県別府市のセレクトショップ『SELECT BEPPU』です。

今回は温泉水を用いた天然染色『温泉染』の研究を行う、温泉染研究所の行橋智彦(ユキハシトモヒコ)さんの工房でお話を伺いました。




草木染めなら聞いたことがあるけれど、温泉染を初めて聞くという方も多いのではないでしょうか。


別府は湧出量・源泉数がともに日本一の温泉地で、泉質は世界にある10種類のうち7種類が確認されており、単純泉や塩化物泉、硫黄泉などさまざまな個性のお湯があります。

天然染料を使った染色に温泉で媒染すると、温泉に含まれる成分やpH値で化学変化が起き、仕上がりの色味に変化が起きます。

ひとつの染料を泉質の異なる温泉と掛け合わせることでたくさんの色味が生まれる。

それを行橋さんは『温泉染』と呼んで研究しています。

(※媒染…染料を繊維に定着させ、発色を促す工程)



(アトリエには様々な植物と温泉を用いて染められた色とりどりの糸や布が並ぶ。)



ところで、行橋さんはどのような経緯で温泉染を始めたのでしょうか?


もともと『旅する服屋さん メイドイン』として、路上に足踏みミシンを置いて洋服の制作をしたり、その土地の植物と水を使って布を染めたりと、そこでしかできないこと、その時に自分ができることを、旅をしながら行ってきた行橋さん。



(2013年愛知県矢作川河川敷にて『橋の下音楽祭』での公開制作の様子)



「海や川、工業排水、牛の糞などその土地を表すなとピンときたものを染めの材料として使っていました。

色がつかなくても染めるという行為に意味を感じていて。

『別府だったら温泉』。特別なことを思いついたわけではなく、今までの活動を続けてきて別府に来てそれが温泉染になった」

と振り返ります。


別府温泉との出会いは、2015年に開催された別府現代芸術フェスティバル『混浴温泉世界』

市民参加型のパフォーマンスの衣装制作に携わり、その翌年からは別府にあるアーティストたちの居住制作スペース『清島アパート』に滞在。それまでの旅をしながらの制作スタイルから一変、別府に拠点を構えて本格的に温泉染の研究を始めます。


別府の温泉は約50年前に降った雨水が元になっていると言われています。

行橋さんは別府で生活し、温泉文化に親しみ制作をする中で

「今自分たちがどう生きているかが50年後の未来を作っている」というものづくりの本質について気づきがあったと言います。



(土に還る素材のみで染められている温泉染の手ぬぐい。中でも柿渋染は太陽光を利用して発色させるため『太陽染』とも言われるそう。)



近年の環境問題への関心の高まりや生活様式の変化の後押しもあってか、今では温泉染にかかわる仕事が9割になったと言う行橋さん。

温泉染の作品の依頼や、他の作家との共同制作、ワークショップの開催など活動の幅は広がっています。


「温泉染という技術を確立してそれをいろんな人たちに使ってほしい。

文化って呼べるものってどんなものかわからないけど、身近な文化の方がいいと思って。」


そんな想いから、自宅でも気軽に温泉染を体験してもらえるようにと去年の春に販売を始めたのが、

こちらの『おうちで天然染色キット』



 

(マスク、手ぬぐい、靴下、巾着がついていて、自宅で手軽に天然染色ができる道具が揃っている。



古くから染料や塗料として抗菌作用や生地を丈夫にするためなどに使われてきた『柿渋』と、大分県別府市にある明晩温泉で収穫された『湯の花』を使用した染色キット。火を使わずに染色するため、お子さんにも挑戦しやすい内容になっています。

また柿渋には抗菌・防臭作用があることから、マスクや靴下などの身近な布製品を染めるのにも役立ち、汚れてしまった衣類の染め替えにもおすすめ。


次回のブログ記事では、こちらのキットを使って実際に温泉染のやり方についてご紹介させていただきます。



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SELECT BEPPU

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